お気に召すまま

舞台の記憶が鮮やかなうちに…

『尺には尺を』

遅くなりましたが先日観劇した舞台の感想を、、、

 

彩の国シェイクスピア・シリーズ第32弾!藤木直人主演の戯曲『尺には尺を』を観劇してきました!

 
先日亡くなった蜷川幸雄さんの遺作である今作
 
『尺には尺を』はシェイクスピアの戯曲の中でも問題作とされる作品で、喜劇なんだけれどラストのどんでん返しがかなり奇想天外で面白い戯曲です。
 
完成度がとても高い、「ああ、私今舞台見てる!!!!!」と心から感じる作品でした。
ひとつひとつの動きが丁寧で、無駄がなく、一見とてもシンプルなセットは、演者を最大限に活かす最高の舞台でした。
 
演者さんの演技力はさることながら皆さんとても発声がいいので、とても聞き取りやすく、余計なストレスのない舞台になっていました。
 
本当に綺麗にまとまっている舞台でした。
しかし、蜷川さんが手がけた最後の舞台、、ではあったけれどどこか蜷川さんが隅々まで手がけたとは言えない感じもして、、もしかしたら、それは私が「蜷川さんはもういない」と思ってしまっているからかもしれないのですが、どこか寂しさも感じる作品ではありました。
 
蜷川さんが1から10まで稽古をつけたらどうなったのだろう、、とか、蜷川さんにも観て欲しかった、、などと厚かましいことを考えたりもしましたが、軽やかなタッチで進むこの作品は、そんな重い気持ちを幾分か軽くしてくれました。
 
最後の作品が喜劇でよかったと思った瞬間でした笑
 
カーテンコールが終わっても止まない拍手に、もう一度幕が上がったと思ったら、舞台上に大きな蜷川さんの遺影が、、、、、涙が止まりませんでした。
 
劇場の一階に今までの蜷川さんがさいたま芸術劇場でつくった作品の劇中写真や稽古場での写真展が開かれているということで、帰りがけに観に行ってきました。
本当に素敵な写真ばかりでたくさんの舞台の思い出が蘇ってきました。
 
蜷川さんが遺したものは本当に大きくて、立派で、かけがえのないものだったのだと改めて感じました。
 
献花台に手向けられたたくさんのお花が、彼の人柄を、彼の功績をあらわしているようで、、、
 
本当に偉大な人を失ってしまったんだなと実感しました。
この作品を観に行くことができて、本当によかったです。

『マイ・フェア・レディ』舞台稽古見学会

昨日は7/10に東京芸術芸術プレイハウスにて公演初日を迎える『マイ・フェア・レディ』の舞台稽古を見学してきました!!

 

演劇志望の学生のために、東宝さんが企画してくださったこのイベント!

いつもは見ることのできない舞台が完成していく過程を見ることができました。

 

昨日は舞台稽古の2日目ということで、先日の稽古での修正から入っていました。

そのあとに、シーンの場当たりと通し稽古をし、修正をし、また通し稽古をし、とたった何分かの短いシーンを何度も何度も繰り返し確認をしていました。

 

通し稽古を終えるたびに、細かい立ち位置の調整や、照明や音響をひとつひとつ丁寧に確認していました。演出の方の指示をしっかりと汲み取り、次に同じシーンを見たときにはそのシーンがしっかりと訂正されていて、以前よりぐっと作品が良くなっていました。

 

また、通し稽古ごとに、細かい動きや、セリフが違っていて、とても楽しむことができました!!!

 

本番さながらの緊張感をもちつつも、和気藹々と稽古に取り組んでいて、とても雰囲気の良いカンパニーだと感じました。

 

今回の見学を通して、何気ないひとつひとつのシーンに対してこれだけたくさんの人が熱意を持って膨大な時間と労力をかけて取り組んでいるのだということを改めて実感しました。

 

見学したのは舞台稽古のほんの一部でしたが、以前よりも舞台が好きになりましたし、本番の舞台がとても楽しみになりました!!

 

初日前なので詳しいことは言えませんが、稽古段階からレベルの高さを伺うことのできる作品になっていました!!

舞台『マイ・フェア・レディ』は7/10から、東京芸術劇場プレイハウスにて上演されます!!

皆さん是非劇場へ!!!!

『それいゆ』

中山優馬主演のストレートプレイ、『それいゆ』を観劇してきました。

中原淳一をモデルにした「美しく生きること」がテーマの物語。

戦時中の何もかもが制限された時代で、戦後の流行に流され誰もが同じものを持つことに執着しだした時代で、迎合せずに、自分が信じる美しさをただひたすら追い求めた中原淳一

誰もが憧れるが、そう簡単に許される生き方ではなく、しようとしたところでそんな確固たる意志はないもので、、、ああ美しいなあ素敵だなあと思うと同時にいくらかの嫉妬すら覚えました。


そんな中原はもちろん、この作品のキャストは皆とてもキャラクターがしっかりしていて、それでいて、全員どこか憎めない人間味溢れる人たちでした。

何人かの人物に触れると、

中山優馬演じる中原は完璧な美しさを求め、周りに流されない意思の強さがあります。自分をしっかり持っていて、人にも自分にもとても厳しい人。だからこそとても孤独で、とても脆い人でした。

桜井日奈子演じる舞子はとても天真爛漫な女の子。だけど彼女の天真爛漫さは辛い現実に対してのカラ元気であり、彼女は彼女の生きる希望である中原の前では、中原の作品を見ている時にはそんな辛い現実を忘れられていたのに、中原から拒絶され、中原の作品を奪われ、ぐれてしまった。しかし、そんな現実を一度は受け入れても、最後には自分の意思を貫いた強さがありました。そんな強さは中原に似ていて、彼女は中原から多大な影響を受けていたんだと感じました。

JONTE演じる天沢は中原の1番の理解者でした。中原に間違っているという勇気を持ち、中原の美しさを見守っていた彼は最後まで中原に寄り添い、彼は中原にとってかけがえのない存在でした。最後に歌った「愛の讃歌」は本当に素晴らしく、見る人に感動と希望を与えました。

辰巳雄大演じる桜木は中原の1番近い存在なようで1番遠い存在。考え方の根本が違うような気はします。だけど、お互いにお互いの腕を認めていて、桜木は中原をすっごく尊敬しているんだということは伝わってきました。とってもじれったい中原と桜木でした。

佐戸井けん太演じる編集長はとてもイライラさせる役どころではあるんですが、彼は彼自身の持つ醜さをしっかり表に出していて、それがいいことなのかは置いておいても、彼の中原への嫉妬は、汚いと思いながらも誰しも、もちろん自分の中にも存在するのではないかと考えさせられました。あれだけしっかり自分の思いをぶつけ、決してその嫉妬を隠したりしないのはかえってとても潔く思えました。

最後は金井勇太演じる五味。彼は本当に不器用な男でした。人の偽物を商売にしたり、人を見世物にしたり、そういうずるいことでしか生きていけない男だったけれど、舞子のことを大切にしていたと思うし、彼の言うことは一理ありました。不器用な彼はとても可愛らしく、人間味に溢れる愛情いっぱいな男でした。

そんな登場人物がどの人を取ってもとても魅力的でした。演技に不安の残る演者も中にはいましたが、ベテランのみなさんのフォローもあり、全体としてはしっかりとまとまっていました。


美しさとは主観的なもので、人それぞれ違うものです。だから、中原が最期に完成させた完璧な造形美は「あなたにはこれがどんな色に見えますか?」「あなたにはこれがどんな形に見えます?」と観客に委ねるものになっていました。

この舞台は舞台美術もとても細かく丁寧で、特に衣装は、戦時中の国民服は裾があげられているのですが、長さが左右で違っていたり外からも縫い目が確認できる感じだったり、とても細かいところまで配慮されていました。

明と暗がはっきりと区別された場面転換はとてもわかりやすく、シンプルな中にもたくさんの細工が施されていて、とても楽しめました。

ストレートプレイでしたが、そこまで重くもなく、だけどしっかりとしたメッセージ性のある今作はとても「ちょうど良い」舞台でした。

たくさんのひまわりと共に、会場の溢れんばかりの拍手に包まれてカーテンコールに立つ演者の顔はとても誇らしく、「上むいて、胸張って、前!」という中原の言葉を体現しているようで、とても美しかったです。

『アルカディア』

大変更新が遅くなりましたが、2016年初ストレートプレイは、シアターコクーンにて、アルカディアを。

この舞台は大掛かりな舞台転換もなく、セットは英国貴族のお屋敷だけ。
その英国貴族のお屋敷を舞台に過去と現在が交錯します。

正直、少し難しい舞台だとは思います。
セットや場面が変わるわけではなく、過去と現在を行ったり来たりするから理解がしにくいという難しさ、、、もありますが、というよりは、セリフが少々難解で、いろいろと教養がないとなかなかぴんとこない、そんな舞台です。

しかし、難しいですが、とても面白い舞台です。
話に一貫性があって、小ネタも豊富で、何度も繰り返し見て、しっかりひとつひとつについてよく考え、理解すると、全てが繋がる瞬間に出会えます。
ああ、これがこうで、これがこうだったから、、、!!!過去と未来、人と人との関わり、全てがスッキリ、今まで抱えていたもやもやが吹っ飛ぶ瞬間は爽快です。

演者は本当に豪華で実力者揃い!これだけ難しい舞台、この人たちでなければ絶対に成り立たない!!!この人たちだったからこそのクオリティでした!!!

一度観ただけでは正直分かりにくい舞台ですが、何度も何度も観たくなる、何度も観る価値がある作品です。
薄っぺらい舞台ではなく、しっかりとした、厚みのある、いい舞台でした。



蜷川幸雄さん

アルカディアの感想をまだ投稿できていないのですが、その前にひとつ更新したいと思います。

5月12日に、偉大な演出家の蜷川幸雄さんが80年の生涯に幕を閉じました。

古典劇から現代劇まで、ストレートプレイから音楽劇まで、幅広く作品をてがけてらっしゃった蜷川さん。
どれもとてもメッセージ性が強く、蜷川さんの作品は観る人にたくさんのことを考えさせてくれました。

わたしは大学でシェイクスピアを専攻していることもあり、NINAGAWAシェイクスピアシリーズがとても好きで、たくさん観劇させてもらいました。
中でも、特にNINAGAWAマクベスが好きで、あの仏壇マクベスが大好きでした。

そんな大好きなマクベスが私が観劇した最後の蜷川作品でした。

大きな仏壇のセットの中で繰り広げられる和装マクベス
華やかで、残酷で、おどろおどろしい雰囲気の中で、権力と復讐に溺れる人の姿はとても幻想的でした。

1つ1つの舞台装置も展開も美しく、無駄がない舞台でした。
役者さんの演技も洗練されていて、主演の市村正親さん、田中好子さんはもちろんですが、なんといっても吉田鋼太郎さんの泣きの演技が気迫たっぷりですばらしかったなあと印象に残っています。

美しく、細かく、その中で演者を最大限にいかしていた蜷川さんの演出は観る人を夢の世界に誘ってくれました。

たくさんの喜びを、楽しみを、悲しみを、ありがとうございました。
もう蜷川さんの作品が見られないなんて悔しすぎます。
でも、わたしは蜷川さんの生きていたこの時代に、蜷川さんのつくった舞台をこの目で観て、感じることができて本当に良かったと思っています。
蜷川さんの舞台が観られて本当に幸せです。

大好きな蜷川さん。
シェイクスピアの没後400年という節目の年にこの世から去ってしまいましたが、わたしは蜷川さんのつくった作品を忘れません、蜷川さんがつくったシェイクスピアを、決して忘れません。

どうか安らかに、おやすみください。

『エドウィン・ドルードの謎』

やっとやっとやっと観られました!!
エドウィン・ドルードの謎!!
わたしは4/14のマチネ公演を観てきました。

笑えるミュージカルと呼ばれるにふさわしいところどころに蒔かれた笑いの種、何が起こるか観客にもキャストにも分からないドキドキドタバタ感、最高に楽しめました!!!!

このミュージカルは観客参加型のミュージカル!エンディングは288通りもあるんです!
というのも、エドウィン・ドルードの謎の原作者であるチャールズ・ディケンズが結末を書かずに生涯を終えてしまったから正規の結末というものが存在しないのです。

エドウィン・ドルードの謎、観劇して感じた魅力はたくさんありましたが、ざっくり言うと
◎舞台の二面性が面白い
◎みんなが主役

まず、舞台の二面性についてですが、このお芝居はラストのドタバタ感を不自然ない感じにするためか、終始ドタバタしてます。というか終始ふざけてます。
設定は、山口祐一郎率いるロワイヤル音楽堂がエドウィン・ドルードの謎を演じます!今日はプレビュー初日!プレビュー初日なので中断もするしチャチャいれるしふざけるけどご容赦を!!という感じです。
なので、場面としてはロワイヤル音楽堂のキャストとしての場面(オフ)と、エドウィン・ドルード内のお芝居(オン)の場面と2つあります。
舞台は中断され放題、ふざけ放題、やりたい放題なのですが、オフからオン、オンからオフの切り替えが清々しく、テンポがいい。キャストの方は皆さんミュージカル界での芸達者なので、スイッチが入った時のクオリティの高さが異常です。特に歌は美しくて聴き惚れちゃいます。
また、ふざける時は全力でふざけるので振れ幅がものすごいです。

みんなが主役というのは、もちろん、山口さんや壮一帆さんは特別で、キャストの方はしっかり各々のキャラクターも見せ場もあるんですが、アンサンブルにも役名も台詞もソロもしっかりあって、アンサンブルが全然アンサンブルじゃないんです!!
犯人と、探偵と、ラストハッピーエンドを迎えるカップルを観客が決めるんですが、主要キャストの方だけではなく、アンサンブルの方までがその候補となっていて、まさに、アンサンブルの方も主役になれる、そんな舞台でした!!
アンサンブルの方は申し訳ないんですが全然存じ上げない方だったのですが、皆さん歌も躍りもお芝居もとても上手で、そういった方々にしっかりスポットが当たるのはすごくいいなと思いました!

宝塚退団初のミュージカル出演だった壮さんは本当に素敵でチャーミングで、
平野綾ちゃんはキュートで声の使い分けが自在で、
昆さんはダンディーな愛すべき変態で、
コングさんはかわいくて味があって深みがあって、
瀬戸さんも保坂さんも本当に華やかで面白くて、
水田くんはハンサムでパリパリしてて、
アンサンブルの方もとても魅力的で、
なにより主演の山口さんはさすがの滑舌と歌声と人を引き付けるお芝居で、
わたしを魅了してくれました!!

そして、まさかの生演奏!!
マエストロと5〜6人の演奏家さんだけとは思えない重奏感が作品に花を添えてくれました。

とにかく笑える作品です。元気が出ます。
そして、一度見たら別のパターンも観たくなってリピートしてしまいたくなる作品です。
現実世界のいやなことから目を背けて、エドウィン・ドルードの世界に身を委ねてみてはいかがですか。

『1789 バスティーユの恋人たち』

1789を観劇してきました!!
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今回はプレビュー公演という、初日の前にお客さんを入れた公開ゲネプロのような公演で見てきました!
本公演と内容が変わらないのに、本公演より少し安く、しかも初日前に観られるというお得すぎるシステムです。笑

1789というタイトルから想像できる通り、フランス革命を舞台にしたこの作品、一言で言うと、「ミュージカルデビューにもってこいな作品」でした。

とにかくとっても話が分かりやすい!
お芝居というと支離滅裂なストーリーで歌も何言ってるかちょっとわからないし…と思われがちですが、この舞台は、
①歴史的にも有名な出来事を時系列順にシンプルに描いている
②登場人物の関係性がはっきりしていて、立場によって風貌がかなり違う
③心情をはっきり歌に乗せて伝えてくれるので深読みや誤解がうまれにくい
ので、いろいろ考えながら見るという感じではなく、スッとストーリーに入れる作品でした。

話が分からないと舞台の内容が理解できないので、話は分かりやすいに越したことは無いですが、話が分かりやすいだけですと、あまり考えない分舞台に飽きてしまいがちなのが悩みどころです。でも安心してください、この舞台には飽きさせない要素が沢山ありますよ!
ひとつはフォーメーションダンス!!民衆たちのダンスは初日とは思えないほどの完成度でした。力強さ、自由を求める雑草魂、圧巻でした!
そして、コメディ要素!ところどころに散りばめられた秘密警察さんたちがとてもいい味を出していました!仮装もお芝居も小芝居もツッコミもすごく工夫されていて、ほっと一息つける場面でした!
最後に衣装!特に花總まりさん演じるマリーアントワネットの衣装はすごく豪華で美しくて最高!紅白の小林幸子顔負けの豪華さでした!笑

そんなこの作品、キャストがとっても豪華なんです。
舞台を選ぶとき、まずはじめに見るのってキャストだと思うんですけど、舞台俳優さんは舞台を観る人からすればカリスマでものすごい人気俳優さんだけど観ない人からの知名度はあまり高くありません。
しかし、今回のキャストは実力も舞台界での人気もキャリアも充分な上に、世間的な知名度も高い小池徹平さん、神田沙也加さんがメーンで出ています。
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また、ミュージカル界では確かな地位を確立している上原理生、宝塚娘役時代から人気も実力も抜群のミュージカル女優のカリスマ花まりさん、話題作に引っ張りだこの期待の若手古川雄大などが脇を固め、申し分ない高クオリティの作品に仕上がっていました。

すごく親しみやすく、舞台独特の敷居の高さを全く感じさせない、ひとりでも、はじめてでも楽しめるものになっていました!
さすが小池さん演出!笑

これから観る方がほとんどだと思うので具体的な内容についてはあえて触れませんでしたが、とにかく舞台初心者の方にも、いろいろな舞台を観ている方にも、たくさんの方に愛されるような作品です!
舞台のいいところがたっぷりつまった3時間!
皆さん是非帝劇へ!!!!