お気に召すまま

舞台の記憶が鮮やかなうちに…

『とりあえず、お父さん』

今日は銀河劇場にて藤原竜也浅野ゆう子本仮屋ユイカ柄本明の4人芝居『とりあえず、お父さん』を観劇しました。

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エイクボーンの『Relatively Speaking』が原作の本作。文脈の中に面白さを追求するエイクボーンの世界を堪能してきました。

ちょっとした勘違いや言葉のあやが新しい勘違いを呼び、またその勘違いが勘違いを呼び……たまに解ける誤解もあれば大きくなる誤解もある………それぞれのキャラクター同士の話の噛み合わなさを神の視線で観るのがとても面白かったです。

この作品はとてもテンポがよく、考える暇もなくぽんぽんと話が進んでいくので、観ている側もだんだんと混乱してきて、気付いたらキャラクターと一緒になって勘違いの渦に巻き込まれてしまいました。

シーンの切り替えはは一度だけ、出演は4人と、とてもシンプルな作りで、だからこそ演者の細かな息遣いや、間の取り方、言い回しや動きに誤魔化しが効かず、一つ一つを丁寧に観ることが出来ました。

主演の藤原竜也さん演じるグレッグは彼女を愛する素直な青年。彼はひとつも嘘をついていないんです。ただ少しだけ言葉が足りない。そんなところもとってもチャーミングで。たぶん彼だけ最後まで勘違いしていることに気付かずにいたんですけど、そんな純粋なところがとても魅力的でした。

本仮屋ユイカさん演じるジニィがこの物語のキーになる人物。彼女は必死だったのだと思います。ハプニングによって計画が崩れ、止む終えずたくさんの嘘を重ねてしまったジニィですが、グレッグを思う気持ちは本物で、だからこそしっかりと清算して次に進みたかったんだと思いました。彼女のまっすぐだけれど空回りしてしまって周りを巻き込んでしまう様子は、なんだか放っておけなくて、とても愛らしかったです。

柄本明さん演じるフィリップが、これはこれは狂っているのです。動きがひとつひとつおもしろく終始笑わせてもらいました。奥さんを愛しているのか、それとも奥さんが面倒みてくれている彼自身の環境を愛しているのか、それともジニィを愛しているのか……。最後まで彼の心が読めなかったです。一番適当に見えて一番複雑なのがフィリップでした。

最後に浅野ゆう子さん演じるシーラはこの4人の中で一番本質が見えていると思います。でも、周りの3人の勘違いや嘘に惑わされて時折自分を見失っている部分も見受けられました。最後は全てを理解したであろうシーラ。芯が強く凛としていて周りを冷静に見守る姿は本当に母のようでした。

どのキャラクターもとても魅力的で面白く、純粋でいてどこか裏を感じる……そんな4人の掛け合いが本当に面白かったです。

銀河劇場が、開演前の静寂が嘘かのように終始笑いに包まれ、とてもたのしい時間でした。

まさに抱腹絶倒の2時間弱。当日券も何枚かあるそうなので、お時間がある方はぜひ足を運んでみてください。